
保育園、高齢者介護施設、障害者福祉施設。災害や有事のとき、自力で避難することが難しい「要配慮者」が過ごす場所を、私たちはどう守ればよいのでしょうか。
いま、防災の常識は「避難所へ逃げる」一辺倒から、「今いる場所を安全にして留まる」方向へ動き始めています。そして、その発想がもっとも重みを持つのが、自力で逃げることが難しい人たちが過ごす施設です。
シェルター・アーク・ジャパン株式会社(以下、シェルター・アーク・ジャパン)は、この「今いる場所を守る」という発想で施設の防災に向き合っています。本記事では、国の方針、在宅避難という時代の流れ、施設で選べるシェルター、そして担当者が次に動くためのポイントを整理します。
背景:国の方針と「要配慮者」という前提

「要配慮者」とは、高齢者、障害のある方、乳幼児など、災害時に特に配慮を要する人を指します(災害対策基本法に基づく考え方)。避難経路を歩けない、医療機器が手放せない、状況の理解が難しい「避難そのものが難しい」という共通の課題を抱えています。
国の備えも動き出しました。2026年3月31日、政府は市区町村単位で全住民分のシェルターを2030年までに確保する基本方針を閣議決定しています。一方で日本のシェルター普及率は約0.02%にとどまり、ほぼ100%のスイス・イスラエルとは大きな差があります。各国制度の比較や方針の詳細は、別記事「世界では当たり前、日本だけが空白 ─ 核シェルター普及率0.02%」で整理しています。
本格的な整備への財政支援は基本方針の時点ではまだ示されていません。施設での導入を検討する際は、活用できる補助制度があるかを所管に確認しておくのが現実的な第一歩になります。
なぜ「施設」が最優先なのか
シェルター・アークが、個人のお宅よりもまず「要配慮者のいる施設」を最優先に考えるのには、理由があります。
きっかけは、ある施設長からの問いかけでした。防災に関する意見交換の場で「有事のとき、うちの入居者をどこへ連れて逃げればいいのか」と問われ、はっきりとした答えを返せなかった。この経験が、弊社が施設の防災に向き合う原点になっています。
認知症のある方、歩くことが難しい方、医療機器が必要な方。避難計画が紙の上にあっても、いざというときに本当に全員を動かせるのか。要配慮者のいる施設ほど、「避難できること」を前提にした防災には限界があります。
「今いる場所を守る」は、すでに防災の主流になりつつある

避難が難しい人がいるなら、その人が過ごす場所そのものに命を守る備えを作る。これが「今いる場所を守る」という発想です。一見すると特別な考え方に思えるかもしれません。しかし実際には、防災の常識そのものが、すでにこの方向へ動いています。
2024年の能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報を受けて、防災への意識は急速に高まりました。住友生命の調査では、災害をきっかけに防災意識が「高まった」人は71.9%にのぼります。ところが、実際に備蓄やハザードマップ確認といった行動にまで移せた人は52.4%。意識は高まっても、半数近くは次の一歩を踏み出せずにいます。
その「次の一歩」として浮かび上がっているのが、避難所に頼り切らず自宅にとどまる「在宅避難」です。こくみん共済 coop の全国調査では、災害時の避難先として「指定避難所」を挙げた人が44.8%、「在宅避難(自宅)」が39.7%とほぼ並び、40代以上では在宅避難を選ぶ人がさらに多くなります。背景にあるのは、避難所そのものへの根強い不安です。同じ調査では避難所生活で「プライバシーの確保」を重視する人が約4割にのぼり、トイレや衛生面を不安に挙げる人も少なくありません。

つまり、自力で動ける人たちでさえ「避難所へ行く」より「住み慣れた場所を安全にして留まる」ことを選び始めている——それが今の防災の現実です。

この流れを最も切実な形で突きつけられているのが、要配慮者のいる施設です。一般の家庭ですら「留まる」を選ぶ時代に、避難そのものが物理的に難しい施設では、「今いる場所を守る」はもはや一つの選択肢ではなく、現実的な備えの中心になります。その具体的な手段の一つがシェルターです。
「奈良は地震が少ないから」と思われがちですが、奈良県は南海トラフ巨大地震の想定エリアに隣接しており、備えは決して遠い話ではありません。地震だけでなく、武力攻撃やテロといった有事への備えも、国の方針として現実の課題になっています。
施設で選べるシェルターの種類
シェルターと聞くと「特別なお金持ちのもの」と思われるかもしれません。しかし実際には、家の一室に収まるサイズから、施設の規模に合わせて連結・カスタマイズできるものまで、選択肢は幅広くあります。
施設での主な選択肢には、次のようなタイプがあります。

やぐら型鉄骨シェルターは、工場や倉庫、施設内の広い空間に向いています。地震時に従業員や入居者が即座に逃げ込め、連結して強度を高めることもできます。

360度全方位防御シェルターは、ユニットを連結して人数に合わせた大きさにできるタイプです。直立した状態で避難でき、大人数の収容にも対応します。
個室や居室には、ベッド型・アルミ軽量型シェルターが適しています。簡単に逃げ込め、落下物や建物の倒壊から身を守ります。

施設の用途・広さ・想定人数に応じて、最適な組み合わせをご提案します。
施設の担当者が次に動くなら
要配慮者のいる施設で防災を見直すなら、次の順序で考えると整理しやすくなります。
まず現状把握です。いまの避難計画で、要配慮者を本当に安全な場所まで動かせるかを点検します。そのうえで、避難が難しい人がいる場所に「その場で守る」備えが作れないか、シェルターという選択肢を検討します。
次に制度と費用の確認です。国土強靭化に関する補助制度が施設やシェルター本体に使えるかは所管への確認が必要なので、早めに問い合わせておくと判断が進みます。最後に、施設の条件に合うシェルターの種類・規模・概算を専門家に相談します。
弊社は、奈良発の民間先行モデルとして、自治体担当者・施設経営者向けの説明資料の提供や、行政向け勉強会の企画を進めています。「まず知ることから始まる備えの文化を、奈良から全国へ」——それが私たちの基本姿勢です。
関連情報
学校・公共施設で活用可能なシェルター関連補助金(近日公開予定)
出典(一次情報)
内閣官房「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」令和8年3月31日 閣議決定(本体PDF / 概要PDF)
首相官邸 令和8年3月31日 定例閣議案件 / 時事通信・日本経済新聞(2026-03-31 報道)
シェルター普及率(国際比較):日本核シェルター協会ほか(民間団体の推計で、出典により数値に幅があります)
防災意識と行動の割合:住友生命「わが家の防災アンケート」2025(PDF。防災意識が「高まった」71.9%、うち行動につなげた52.4%)
避難先と避難所への不安:こくみん共済 coop〈全労済〉「防災・災害に関する全国都道府県別意識調査2024」(調査ページ。指定避難所44.8%/在宅避難39.7%、避難所のプライバシー・トイレへの不安)
「要配慮者」の定義:災害対策基本法(内閣府 防災情報)
お問い合わせ
要配慮者のいる施設の防災、シェルターの導入について、まずはお気軽にご相談ください。施設の条件に合わせた選択肢と概算をご案内します。

