
学校や体育館、庁舎に核シェルターを後から置くとしたら、どこに置き、ふだんは何に使うのか。国の基本方針は、新しい箱を建てることよりも、いま在る建物を活かし、平時と有事で兼用することを軸にしています。予算が通りにくい理由は「使わない設備に見えること」なので、置き場所と平時の用途を最初にセットで決めるのが実務の要です。この記事では、公共施設への後付けを考える自治体・施設のご担当者に向けて、場所の選び方、平時の使い方、満たすべき仕様の当たり所を、国の方針と先行整備の要件から整理します。
結論サマリー
国の方針は、地上施設に加えて地下駅舎や地下街、大規模建築物の地下駐車場といった既存の地下空間を確保する方向に動いています。置き場所の第一候補は「可能な限り深い地中」で、先行整備では平時は会議室や駐車場として使う前提が置かれました。仕様の当たり所は先行整備の技術ガイドラインで、国はシェルターの技術的な仕様や名称の整理を進めている段階です。したがって後付けの検討は、建物の棚卸し → 平時用途の決定 → 要件の当てはめ、の順で進めるのが現実的です。

背景:国の方針は「建てる」より「今ある建物」へ
2026年3月31日、政府は緊急事態を想定した避難施設の確保に関する基本方針を閣議決定しました。制度の中身と自治体が取れる選択肢は自治体担当者のための核シェルター入門で扱っているため、ここでは建物側の実務に絞ります。
方針の前後で、考え方の軸はこう変わりました。
観点 | 従来 | 基本方針 |
確保の単位 | 都道府県単位 | 市区町村単位 |
対象の建物 | 公共施設中心 | 官民連携(民間施設の活用) |
人口の見方 | 夜間人口をベース | 昼間人口も視野に |
他分野との関係 | 国民保護制度だけ | 自然災害対策と連携(デュアルユース) |
施設の位置 | 地上施設が多い | 地上・地下ともに指定促進 |
デュアルユースは、帰宅困難者対策の一時滞在施設などと緊急一時避難施設を兼用し、武力攻撃事態等から自然災害までシームレスに対応させる考え方です。滞在機能の充実として、水・食料・簡易ベッドの備蓄による数日間の滞在も想定に入りました。
学校や庁舎は、昼間に人が集まる場所です。昼間の人口を視野に入れる方針のもとでは、公共施設そのものの位置づけが以前より重くなります。
どこに置くか ─ 深さと既存の地下から考える
第一候補は「可能な限り深い地中」
先島諸島で進む特定臨時避難施設は、市町村が国の財政措置を受けて公共・公用施設の「可能な限り深い地中」に設置する形をとります。宮古島市では新総合体育館の地下1階に緊急一時避難機能を持たせた駐車場を整備する計画で、体育館の総事業費は81億円を見込みます。
既存施設は「地下がある建物」から当たる
後付けの現実的な順序は、地下や堅ろうな部分を持つ建物から棚卸しすることです。庁舎、図書館、体育館、地下駐車場を持つ複合施設が候補になります。地下を持たない小中学校では、増築、別棟、敷地内への設置という順で検討が進みます。
民間の地下も同じ枠に入る
基本方針は、確保の対象として地下駅舎、地下街、大規模建築物の地下駐車場を名指しし、一定の規模以上の建築物には駐車施設が併設されていることにも触れています。自前の施設だけで数を積み上げる必要はなく、街の中の地下空間を持つ事業者との連携も同じ枠の中にあります。
指定は「建てる話」の前に「同意の話」
避難施設は国民保護法第148条に基づき、都道府県知事が施設管理者の同意を得て指定します。後付けを進める場合も、施設の所管課と管理者の合意を先に取る段取りが必要です。
ふだん何に使うか ─ 会議室・駐車場・倉庫
先行整備では、平時は会議室や駐車場などとして利用することが想定されています。これは予算の説明の仕方を変えます。使う機会のない設備ではなく、日常的に使う施設の一部として整備し、緊急時にはその区画が避難先になる、という組み立てです。
用途の候補は、会議室、駐車場、備蓄倉庫、災害対策本部の予備室などです。指定管理者が入る施設では、平時の運用と鍵の管理を誰が担うかを設計段階で決めておくと後戻りが減ります。
満たすべき仕様の当たり所
特定臨時避難施設には技術ガイドラインが定められ、弾道ミサイルや航空攻撃など4類型の武力攻撃を想定し、壁や床の厚さは原則30センチ以上の鉄筋コンクリート造とされました。飲食料の備蓄やライフラインの整備、1人当たり2平方メートル程度のスペース確保も求められています。
国は、シェルターの技術的な仕様や定義・名称、優先して取り組むべき地域について1年後を目途に整理する方針です。つまり現時点で参照できる最も具体的な物差しは、この先行整備の要件になります。
実務でどう動くか
最初の一歩は、施設ごとに地下や堅ろうな区画を洗い出す棚卸しです。次に、その区画を平時に何に使うかを所管課と決めます。この二つが揃うと、稟議で説明できる形になります。
対象の優先順位で迷う場合は、自力での避難が難しい方が日常的にいる施設から検討するのが実務的です。考え方は要配慮者のいる施設をどう守るかで整理しています。
地方自治体のご担当部署からは、方針は把握しているが、ふだん使わない設備に予算を付ける説明が難しいという声を伺います。平時の用途を先に決める組み立ては、その説明のつまずきを外すための順序でもあります。
稟議の段階で必要になる紙は、多くの場合3枚です。候補となる区画を示した図面、平時の用途とその運用を担う人、そして参照した要件の出典です。3枚目があると、根拠を後から問われたときに議論が止まりません。
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設備として何ができて何ができないのかは核シェルターとは何かで整理しています。
出典
内閣官房「シェルター基本方針(概要)」(2026年3月31日閣議決定) https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/260331shelter_gaiyou.pdf
内閣官房 国民保護ポータルサイト「避難施設」 https://www.kokuminhogo.go.jp/hinan/
宮古毎日新聞「シェルター整備加速/政府」(2024年3月30日) https://www.miyakomainichi.com/news/news-180078/
時事ドットコム「市町村単位で全住民収容 『シェルター』方針を閣議決定」(2026年3月31日) https://www.jiji.com/jc/article?k=2026033100386&g=pol
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