
既存の地下をシェルターにする話は、置ける場所があるかどうかでは終わりません。
どういう順番で、どの年度に何をするのか、という工程の話が続きます。東京都が2026年8月に表明した八重洲駐車場の計画は、まず調査から入るという形をとっており、これから検討する自治体にとっては順序の参考になります。国の方針も、改修はその建物のメンテナンスの周期に合わせて取り組むよう勧めています。
この記事では、自治体・施設のご担当者に向けて、先行事例の進め方と、自分のまちで検討する場合に押さえておく順序を整理します。
結論サマリー
東京都は、東京駅前の八重洲通りの地下にある都八重洲駐車場を地下シェルターとして整備する方針を示し、2026年度から詳細調査を開始するとしています。都営地下鉄麻布十番駅に併設された都防災倉庫に次ぐ2例目で、調査や工事の期間中も完成後も駐車場の営業に影響はない見込みとされています。国の基本方針も、手を入れる時期は建物側の周期に合わせるよう促しています。つまり工程は、シェルターの計画として単独で走らせるより、その建物の改修計画に載せるほうが現実的だということです。

先行事例は何から始めているか
小池百合子知事が2026年8月7日の定例記者会見で明らかにした計画では、対象は八重洲通りの地下1階と2階にある約260台分の駐車スペースで、延べ床面積は1万平方メートルを超える規模の地下空間です。
2026年度から始めるのは、ミサイル攻撃時に想定される爆風や破片の飛散、建物の倒壊といったリスクの詳細調査です。設計や工事はその先に置かれています。
ここで注目したいのは、調査が最初に独立して置かれている点です。地下構造物は、図面が残っていても現況と一致しないことがあります。躯体の状態、設備の位置、出入口の数と幅。これらを確かめないと、何をどこに付けられるのかが決まりません。調査を設計の中に含めてしまうと、設計の途中で前提が崩れます。
もう一つ実務的に重いのは、営業への影響がない見込みとされている点です。既存施設を使い続けたまま手を入れられるかどうかは、庁内の合意の取りやすさを大きく変えます。
国の方針は改修のタイミングをどう言っているか
2026年3月31日に閣議決定された基本方針は、地上施設に加えて地下駅舎、地下街、大規模建築物の地下駐車場といった民間の既存の地下施設をシェルターとして確保する方向を示しています。一定の規模以上の建築物には駐車施設が併設されていることにも触れており、地下駐車場は名指しで確保の対象に入っています。
改修の中身については、数時間から1日程度、長くとも数日程度の短期間の避難を念頭に置き、避難する人を受け入れるために付加的に必要となるスペースや備蓄倉庫、電気設備などの滞在機能、それに簡易トイレや簡易ベッドなどの備蓄の充実を推奨するとしています。既存施設の態様や物理的な制約、地域の実情に応じて、既存施設を最大限活用した選択的で柔軟なものとする、とも書かれています。
そしてタイミングについて、当該の改修は施設ごとの計画的なメンテナンスサイクルを踏まえた適切なタイミングで取り組むことに配慮することを推奨する、としています。これは工程を考えるうえで効いてくる一文です。
自分のまちで逆算するときの順序
先行事例と国の方針を合わせると、順序は次のようになります。
段 | やること | 押さえどころ |
1 | 対象になりうる地下の棚卸し | 地下を持つ庁舎・体育館・図書館・複合施設。所有か、協定か |
2 | その建物の改修計画の確認 | 大規模修繕や設備更新がいつ来るか。ここに載せられるか |
3 | 現況調査 | 躯体・設備・出入口。図面と現況の差を先に出す |
4 | 平時の用途の決定 | 使わない箱にしない。予算の説明がここで決まる |
5 | 設計 | 滞在機能と備蓄の当て込み |
6 | 工事 | 施設の休止期間を改修計画と合わせる |
順序の中で最も見落とされやすいのは2段目です。建物の改修計画を先に見ておくと、単独では通りにくい工事が、既に予算の見通しがある更新工事の一部として検討できるようになります。逆に改修計画を見ないまま設計から入ると、工事の年度が建物側の都合と衝突します。
どこに置くのが妥当か、平時に何に使うかという選定そのものは核シェルターは公共施設に後付けできるのかで扱っているため、この記事では工程に絞りました。制度の側から自治体が取れる選択肢は自治体担当者のための核シェルター入門にまとめています。
2例目という位置づけの意味
八重洲の計画は、都営地下鉄麻布十番駅に併設された都防災倉庫に次ぐ2例目とされています。件数としては少ないものの、既にある地下に手を入れるという形の前例が積み上がり始めている段階だとは言えます。
弊社は、他の自治体がこの計画から借りられるのは金額でも規模でもなく、進め方の刻む方法だと考えています。調査を独立させ、既存の営業を止めずに検討する。この二つは、規模が違っても順序として使えます。
実務でどう動くか
地方自治体のご担当部署からは、検討を始めたいが何から手を付けるのか分からない、という声を伺います。工程の話に落とすと、最初の一歩は予算をほとんど伴いません。
具体的には、地下を持つ施設の一覧と、それぞれの改修計画の時期を並べた紙を一枚作るところからです。この紙があると、シェルターの検討は新しい事業ではなく既存の改修計画への追加として議論できます。庁内の説明でつまずく理由の多くは、単独の新規事業として提案してしまうことにあります。
自分のまちで既に指定されている施設を調べる手順は緊急一時避難施設とはで整理しています。
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設備として何ができて何ができないのかは核シェルターとは何かで扱っています。
出典
Impress Watch「東京都、八重洲駐車場を地下シェルターに整備 ミサイルから避難」(2026年8月7日) https://www.watch.impress.co.jp/docs/news/2131801.html
東京報道新聞「ミサイル脅威で加速する首都防衛、東京駅前も『シェルター化』へ」(2026年8月) https://tokyonewsmedia.com/archives/26331
内閣官房「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」本体および概要(2026年3月31日閣議決定) https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/260331shelter_hontai.pdf / https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/260331shelter_gaiyou.pdf
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地下を持つ施設の棚卸しと、改修計画に載せられるかどうかの見立ては、図面を一度合わせるところから始まります。年度の見通しが立っていない段階でも構いません。お気軽にご相談ください。

