シェルター・アーク・ジャパン株式会社

防災庁ができると自治体の窓口はどう変わるのか ─ シェルターの相談先を条文で切り分ける

防災庁ができると自治体の窓口はどう変わるのか ─ シェルターの相談先を条文で切り分ける

防災庁は11月2日に発足します。9月25日の閣議で決まり、9月30日に施行期日を定める政令が公布されました。自治体の防災・危機管理のご担当者からすると、まず知りたいのは「これから、どの話をどこへ持っていけばよいのか」でしょう。避難施設やシェルターの相談先は変わるのか。結論を先に書くと、窓口は一つになりません。災害時の救援は防災庁の所掌に入る一方で、国民保護にもとづく避難施設の確保は、防災庁設置法の所掌事務には現れないからです。憶測ではなく、公布された条文と国の予算要求という二つの資料から、11月以降の地図を1枚つくります。

結論サマリー

防災庁設置法で防災庁の任務とされたのは、災害対策基本法でいう「防災」、すなわち災害予防・災害応急対策・災害復旧・災害からの復興です。そのうえで、国民保護法にもとづく避難住民等の「救援」は、所掌事務として明示で入っています。

他方でシェルターの確保や避難施設の指定は、同じ条文のどこにも出てきません。国の予算の側でも、シェルターに関する調査・研究の費目は内閣官房の要求に立っていて、防災庁の要求には入っていません。

つまり11月以降も、災害の話と国民保護の避難施設の話は、別の窓口に分かれたままだと読むのが自然です。ただし、9月30日に公布された防災庁組織令が定めたのは職の置き方までで、どの事務をどの部署が受け持つかは示されていません。実務の移管も発足後に整理されるため、断定はできません。

公共施設の廊下に等間隔で並ぶ扉。防災庁の発足後も、災害と国民保護で相談先が分かれたままであることを示す。

背景 ─ 防災庁は何をする組織か

防災庁設置法は令和8年法律第61号として、令和8年7月17日に公布されました。同時に、関係法律の整備等に関する法律(令和8年法律第62号)も公布されています。

法律の第3条は防災庁の任務を定めており、災害対策基本法の基本理念にのっとって「防災」に関する内閣の事務を内閣官房と共に助けること、そして防災に関する行政事務を円滑かつ迅速に遂行することとしています。ここでいう防災とは、災害予防・災害応急対策・災害復旧・災害からの復興を指します。

組織としては、内閣総理大臣を長とし、防災庁の事務を統括する防災大臣が置かれます。内閣府にあった中央防災会議は防災庁へ移り、地方機関として防災局が置かれます。

施行期日は、法律上は「令和8年中において政令で定める日」とされていました。これを受けて9月25日に閣議決定され、施行期日を定める政令(令和8年政令第303号・9月30日公布)が、施行期日を令和8年11月2日と定めました。同じ日に、内部の組織を定める防災庁組織令(令和8年政令第304号)も公布されています。

移るもの ─ 国民保護の「救援」は所掌に入る

自治体の担当者にとって重要なのは、国民保護の分野が丸ごと外れているわけではない、という点です。

設置法の第4条第2項第二号は、防災庁が自ら実施する事務として「被災者の応急救助及び避難住民等の救援に関すること」を挙げています。ここでいう避難住民等は、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)の第75条第1項に規定するものだと、条文の中で明示されています。

国民保護法でいう救援とは、避難した住民に対する収容施設の提供、食品・飲料水・生活必需品の給与、医療の提供といった一連の措置です。武力攻撃事態であっても、この救援の部分は防災庁の所掌に入る。ここが今回の整理でいちばん見落とされやすいところです。

現れないもの ─ 避難施設の指定とシェルターの確保

一方で、避難施設の指定やシェルターの確保にあたる事務は、設置法の所掌事務に見当たりません。

設置法の条文に「避難施設」という語は一度だけ登場しますが、それは活動火山対策特別措置法にもとづく避難施設緊急整備地域の指定に関するもので、国民保護の文脈ではありません。国民保護法第148条にもとづく避難施設の指定は、これまでどおり都道府県知事と指定都市の市長が行う事務であり、国の側でその確保を所管する事務は、設置法には書かれていません。

予算の側を見ると、この読み方は裏づけられます。令和9年度の内閣官房の予算概算要求の概要には、国家危機管理室の要求として「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)に係る調査・研究等」という費目が立っています。他方、防災庁の令和9年度予算概算要求等の概要を通して見ても、シェルターや国民保護にあたる費目は出てきません。同資料で避難施設に関わる要望として挙がっているのは、津波防災地域づくり法にもとづく津波避難施設の税制特例の延長です。

条文と予算の両方が、同じ線を引いているということです。

ただし、ここで「防災庁はシェルターを扱わない」と断定することはできません。公布された防災庁組織令は、統括官4人・参事官15人などを置くことを定めていますが、どの統括官がどの事務を受け持つかまでは書いていません。実務上の移管も発足以降に整理されます。現時点で言えるのは、設置法の所掌事務には現れない、という範囲までです。

実務でどう動くか

11月以降、担当者の側で確かめておくとよいことが三つあります。

一つめは、庁内の担当割りの確認です。災害の避難所と、国民保護の緊急一時避難施設は、同じ建物を指していても根拠法が違います。所管の課が分かれている団体では、国の側が分かれている以上、こちらも分けたまま相互に情報を通す形が現実的です。指定状況そのものの見方は緊急一時避難施設の指定状況は目標を達成したで整理しました。

二つめは、発足後に示される事務の分担(どの統括官・参事官が何を受け持つか)を、一次資料で確かめることです。報道の見出しだけで判断すると、救援まで内閣官房に残っていると誤解したり、逆に避難施設まで防災庁へ移ったと誤解したりします。

三つめは、待たずに進められる作業を止めないことです。施設の棚卸しや、指定した施設が実際に開くかの点検は、どちらの組織が所管しても必要になります。制度の全体像と自治体が取れる選択肢は自治体担当者のための核シェルター入門に、毎月の動きは最新動向レポートにまとめています。

組織が変わる時期は、手が止まりやすい時期でもあります。止めなくてよい部分を先に見分けておくことが、弊社としていちばんお勧めしたい準備です。

出典

防災庁設置法(令和8年法律第61号・令和8年7月17日公布)案文および法律概要 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260306/shiryo2.pdf / https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/pdf/gaiyo_260717.pdf

防災庁設置法の施行期日を定める政令(令和8年政令第303号・令和8年9月30日公布)要綱・案文 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260925/shiryo1.pdf / https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260925/shiryo2.pdf

防災庁組織令(令和8年政令第304号・令和8年9月30日公布)要綱・案文 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260925/shiryo3.pdf / https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260925/shiryo4.pdf

内閣官房「防災庁設置準備」 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/index.html

内閣官房「令和9年度予算概算要求の概要」(令和8年8月) https://www.cas.go.jp/jp/yosan/pdf/r9_yosan_gaisan.pdf

防災庁設置準備室「令和9年度予算概算要求等の概要」(令和8年8月26日) https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260826/r9_gaiyo.pdf

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