
シェルターの整備に使える国の制度は、いまはまだ形になっていく途中の段階です。令和8年度の地方財政措置の資料を開くと、防災・減災の枠は拡充されている一方で、そこに「国民保護」や「緊急一時避難施設」という言葉はまだ登場しません。制度を探すより先に、どの枠がどこまでを見ているのかという地図を持っておくほうが、庁内の説明では役に立ちます。
この記事では、自治体の財政・危機管理のご担当者に向けて、令和8年度の制度の中身と、現時点で確実に言えること・言えないことを整理します。
結論サマリー
令和8年度の地方財政措置で拡充されたのは、緊急防災・減災事業債と緊急自然災害防止対策事業債で、事業期間は令和12年度まで5年間延長されました。ただし拡充の理由は自然災害の激甚化・頻発化への対応と明記されており、拡充された対象事業は指定避難所や指定緊急避難場所に関するものです。国民保護の枠組みで指定される緊急一時避難施設は、これらの資料に登場しません。国の基本方針が示した誘導策は容積率の緩和の検討と事業者への表彰で、整備そのものへの補助や助成はこれからの課題として置かれています。例外は先島諸島の5市町村で、こちらは別の枠組みで国が支援しています。

令和8年度に拡充されたのは何か
総務省が令和7年12月26日に示した令和8年度地方財政対策では、防災・減災対策の推進として、緊急防災・減災事業費と緊急自然災害防止対策事業費の対象事業を拡充したうえで、事業期間を令和12年度まで5年間延長するとしています。拡充の趣旨は、自然災害の激甚化・頻発化に対応するため、地方団体が単独事業として実施する防災・減災、国土強靱化の取組を一層推進できるようにすることだと書かれています。
規模で見ると、地方財政計画の投資的経費のうち単独事業に含まれる緊急防災・減災事業費は、単位を兆円とする表で0.5とされています。
消防庁が同日に示した令和8年度の地方財政措置では、拡充される対象事業が4つ挙げられています。
拡充される対象事業 | 中身 |
指定避難所における避難者の生活環境改善 | 厨房設備・入浴設備・洗濯設備、これらの機能を一体的に備えた災害対応車。給水設備は対象として明確化 |
指定緊急避難場所における一時的な滞在のための整備 | 防災東屋等・防災コンテナ |
緊急消防援助隊に係る高度土砂吸引車の整備 | 土砂災害現場での救助活動用 |
庁舎・消防庁舎における衛星通信システムの整備 | 通信の途絶への対応 |
いずれも自然災害を前提にした整備です。なお、いわゆる非適債事業については特別交付税措置が用意されており、措置率は0.7とされています。
災害側の枠と国民保護の枠は、いまは別に置かれている
弊社は、この二つの資料を通しで確認しました。総務省の令和8年度地方財政対策のポイントと概要、および消防庁の令和8年度地方財政措置のいずれにも、「国民保護」「緊急一時避難施設」「シェルター」という語は現れません。
これは制度が否定されたという意味ではありません。避難所や避難場所は災害対策基本法に基づく仕組みで、緊急一時避難施設は国民保護法に基づく仕組みです。所管する法律が違うので、災害側の財政措置の資料に国民保護の語が出てこないこと自体は自然です。制度の系統がどう分かれているかは緊急一時避難施設とはで整理しています。
ここから言えることは、範囲を限った話になりますが、令和8年度の地方財政措置として示された資料の中には、シェルターの整備に直接あてられる枠は見当たりませんでした。他の省庁の制度を網羅して確認したわけではないので、これ以上の一般化はできません。
国の基本方針は誘導策として何を挙げているか
2026年3月31日に閣議決定された基本方針は、民間の既存の地下施設をシェルターとして確保する方向を示し、その後押しとして大規模建築物の容積率の緩和などの奨励策を検討すること、事業者に対する表彰などで民間の取組や投資を後押しすることを挙げています。滞在機能の充実については、危機管理投資の一環として国土強靱化の対策などと連携して促進するとされています。
一方で、整備そのものに対する補助金や助成は、基本方針の時点ではまだ示されていません。制度としてご案内できる段階には、もう少し時間がかかりそうです。方針の全体像と自治体が取れる選択肢は自治体担当者のための核シェルター入門にまとめています。
例外は先島諸島
先島諸島の5市町村、すなわち与那国町、竹富町、石垣市、多良間村、宮古島市では、内閣官房・消防庁・防衛省の支援のもとで、新たに建設する公共・公用施設の地階に特定臨時避難施設を整備する取組が進んでいます。平時には会議室や駐車場などとして使い、有事には避難誘導に従事する行政職員や避難に遅れる住民が広域避難を完了するまでの一定期間避難できる施設です。
ここは避難の困難性など一定の要件を満たす地域として国が先行して支援している枠組みで、他の自治体がそのまま同じ枠を使えるわけではありません。ただし、要件や仕様の物差しとしては現時点で最も具体的です。
実務でどう動くか
地方自治体のご担当部署からは、財源の裏付けがないまま検討を進めても庁内で止まる、という声を伺います。順序を入れ替えると、止まりにくくなります。
先に決めるのは、平時に何に使う場所なのかです。基本方針は平時と有事の兼用を軸に置いているため、平時の用途が決まっている案件は、災害側の枠組みと重なる可能性が出てきます。逆に平時の用途が空欄のままだと、どちらの枠にも当たりません。置き場所と平時の使い方の考え方は核シェルターは公共施設に後付けできるのかで扱いました。
そのうえで、稟議に添える資料としては、制度を一つずつ確かめた経緯そのものが役に立ちます。参照した資料の名前と日付が残っていれば、次に制度が動いたときに議論を再開する起点になります。
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設備として何ができて何ができないのかは核シェルターとは何かで整理しています。
出典
総務省「令和8年度地方財政対策」ポイントおよび概要(令和7年12月26日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001048684.pdf / https://www.soumu.go.jp/main_content/001048685.pdf
消防庁「令和8年度地方財政措置(消防庁関係)」(令和7年12月26日) https://www.fdma.go.jp/pressrelease/info/items/R8shouboutihouzaisei.pdf
内閣官房「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」本体および概要(2026年3月31日閣議決定) https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/260331shelter_hontai.pdf / https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/260331shelter_gaiyou.pdf
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