
避難施設を指定した次に来るのは、それを実際に動かす訓練です。国民保護の訓練は、国と自治体が本部を動かす共同訓練と、住民が実際に近くの建物や地下へ入る住民避難訓練の二つに分かれます。令和8年度の実施予定は、共同訓練が34件、住民避難訓練が17件です。全国の市町村は1,741あるので、住民が動く訓練の順番が自分のまちに回ってくるまでには、時間のかかる計算になります。この記事では、自治体・施設のご担当者に向けて、二つの訓練の中身と今年度の実施予定、そして順番を待つあいだに自前で始められることを整理します。
結論サマリー
令和8年度の国民保護共同訓練は34件で、その内訳は国が主導する国重点訓練8件と、都道府県が主導する県主導訓練26件です。弾道ミサイルを想定した住民避難訓練は17件で、市町村の数に対して極めて少ない件数にとどまります。それでも国の方針は、施設を増やす取組と訓練を同時に進めるよう求めています。したがって、順番が回ってくるのを待つあいだの現実的な一歩は、指定済みの施設が実際に使える状態かどうかを自前で点検することです。

訓練は「本部が動く」と「住民が動く」に分かれる
国民保護法に基づく共同訓練は、関係機関の機能確認と相互の連携強化、そして国民の理解の促進を目的として、国・地方公共団体・関係機関・地域住民が一体となって行うものです。この共同訓練は、さらに二つの形に分かれます。
実動訓練は、対策本部の運営と相互の連絡調整、避難住民の誘導、収容施設の供与といった救援など、一連の措置を現地で行うものです。図上訓練は、対策本部の運営と連絡調整、警報の通知、避難の指示といった措置について、状況判断と情報伝達の要領を図上で行うものです。人と物を実際に動かすか、判断と伝達の手順を確かめるか、という違いになります。
もう一つの弾道ミサイルを想定した住民避難訓練は、目的が住民側に置かれています。弾道ミサイルが飛来する可能性があると判明した場合にどう行動すべきか、住民の理解を深めるため、防災行政無線などで情報伝達を受けた住民が、近くの建物の中や地下へ避難する形をとります。指定された施設に人が実際に入る訓練は、こちらです。
制度としての緊急一時避難施設の位置づけと、自分のまちの指定状況の調べ方は緊急一時避難施設とはで整理しています。
令和8年度に予定されている訓練
内閣官房・内閣府・消防庁が令和8年4月28日に公表した実施予定は、次のようになっています。
区分 | 件数 | 内訳 |
国重点訓練 | 8件 | 実動・図上訓練2件/図上訓練(国民保護地域ブロック検討会 第2部)6件 |
県主導訓練 | 26件 | 実動・図上訓練2件/実動訓練2件/図上訓練22件 |
共同訓練 合計 | 34件 | — |
弾道ミサイルを想定した住民避難訓練 | 17件 | 都道府県・市町村ごとに個別に実施 |
国が主導する国重点訓練の実動・図上訓練では、武力攻撃予測事態を想定した訓練が行われます。国民保護地域ブロック検討会は、国と地方公共団体が国民保護や最新の情勢に関する認識を共有する第1部を開いたうえで、第2部で全国を6つの地域に分け、ブロックごとに課題の検討と意見交換を行う形です。なお第1部は全都道府県が対象のため、上表の件数には含まれていません。
17件という数をどう読むか
住民避難訓練の17件は、都道府県ではなく市町村の単位で行われます。市町村は全国で1,741あります。単純に割れば、一つの市町村に順番が回るのは百年単位の間隔の計算になります。
近隣の例で言えば、大阪府和泉市が令和8年11月1日に予定されています。9月中に実施されるのは熊本県人吉市の9月27日です。関西で年に一件という頻度からすると、国の枠組みに乗る機会を待つだけでは、備えを進めるのに時間がかかります。
弊社は、この件数の少なさを国や県の姿勢の問題として読むべきではないと考えています。共同訓練は国と県と関係機関を同時に動かすため、一件あたりの重さが大きく、件数を増やしにくい構造にあります。読み替えるべきは、待つ側の設計です。
順番を待つあいだに自前で始められること
国の基本方針は、国民保護体制の強化と実効性の向上のため、地域の特性や実情を踏まえ、避難実施要領のパターンの作成や国民保護措置のための訓練の実施と相互に関連させながら、様々な種類のシェルターの確保に継続的に取り組むとしています。訓練と施設の確保は、順番に並ぶものではなく並行するものとして書かれています。
自前で確かめられることは、大がかりな訓練を組まなくても三つあります。
一つ目は、指定した施設が本当に開くかどうかです。夜間や休日に鍵を持っている人が誰か、その人が不在のときに誰が開けるのか。指定は書面の上の話で、開錠は人の話です。
二つ目は、収容できる人数の見立てです。指定の際に想定した人数と、実際に人が立てる面積は必ずしも一致しません。柱や設備の位置を含めて図面で当たり直すと、想定との差が見えます。
三つ目は、誘導する人の割り当てです。近くの建物や地下へ入るまでの数分間、どこに誰が立つのかを決めておくと、住民避難訓練を実施するときの下地がそのまま使えます。
これらは施設側の実務で、建物に何を備えるかという話とつながります。既存の公共施設に後から備えを持たせる場合の置き場所と平時の使い方は核シェルターは公共施設に後付けできるのかで扱いました。
実務でどう動くか
地方自治体のご担当部署からは、方針は把握しているが、庁内の稟議や議会での説明に使える資料が手元にないという声を伺います。訓練は、その資料を作るのに向いた題材です。件数という事実は出典が明確で、施設の点検という次の一歩は予算を伴わずに始められます。
順序としては、今年度の実施予定で自分の県が対象になっているかを確認し、そうでなければ上の三つの点検を先に済ませる形が現実的です。点検の結果は、施設を増やす議論をするときの根拠にもなります。制度の全体像と自治体が取れる選択肢は自治体担当者のための核シェルター入門にまとめています。
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出典
内閣官房・内閣府・消防庁「令和8年度における国民保護に係る国と地方公共団体の共同訓練の実施」(令和8年4月28日) https://www.kokuminhogo.go.jp/news/assets/R8kunrenyotei.pdf
内閣官房「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」(2026年3月31日閣議決定) https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/260331shelter_hontai.pdf
内閣府政策統括官(防災担当)・消防庁「地方公共団体における業務継続計画・受援計画策定状況の調査結果」(令和8年3月19日) https://www.soumu.go.jp/main_content/001061265.pdf
お問い合わせ
指定した施設が実際に使える状態かどうかの点検は、図面と現地を一度合わせるところから始まります。訓練の予定が立っていない段階でも構いません。お気軽にご相談ください。

