
10月は、この連載を始めてから初めて「動いた」が主になる月でした。5年続いた指定の集中取組期間が目標を達成して終わり、来年度の予算要求にシェルターの費目が立ち、11月には防災庁が発足します。地域では総合防災訓練が開かれ、弊社もその現場に立ちました。自治体・施設のご担当者に向けて、今月何が動いて何が動かなかったのか、そして年末に向けて何を見ておけばよいのかを、月次のレポートとして整理します。個々の論点は今月公開した記事で詳しく扱っているため、ここでは全体の地図に絞ります。
今月の要点
領域 | 現在地 |
指定 | 令和3〜7年度の集中取組期間が終了。取組目標は全67の指定権者で達成 |
組織 | 防災庁が11月1日に発足する見通し。国民保護の救援は所掌に入り、避難施設の確保は現れない |
財源 | 令和9年度の要求に立ったのは調査・研究の費目。整備への補助ではない |
基準 | 技術的な仕様や優先地域の整理は2027年春頃を目途。10月中の前倒しの発表は確認できていません |
地域 | 10月25日、奈良県内の2つの総合防災訓練で防災啓発展示が行われた |

動いたこと ─ 数を積む段が、目標を達成して終わった
公表された緊急一時避難施設の指定状況(令和8年4月1日時点)で、5年間の集中取組期間の結果が確定しました。取組目標だった各指定権者単位の人口カバー率100%は、全67の指定権者で達成されています。
ただしこの率は施設の面積から換算した値で、収容の実績ではありません。地下施設だけで見た人口カバー率は全国で5.9%、防護の機能を備えた特定臨時避難施設は整備予定の段階です。何が達成され、何が残ったのかは緊急一時避難施設の指定状況は目標を達成したで数字の読み方まで整理しました。
動いたこと ─ 11月に防災庁が発足する
防災庁設置法は令和8年7月17日に公布され、施行期日は令和8年中において政令で定める日とされています。11月1日の発足は報道にもとづく見通しです。
担当者にとっての実務上の論点は、相談先が変わるのかどうかでしょう。設置法の条文では、国民保護法にもとづく避難住民等の「救援」は防災庁の所掌事務に明示で入る一方、避難施設の指定やシェルターの確保にあたる事務は現れません。予算の側でも、シェルターに関する調査・研究の費目は内閣官房の要求に立っています。条文と予算の両方からの切り分けは防災庁ができると自治体の窓口はどう変わるのかにまとめました。
動いたこと ─ 地域では訓練が開かれた
10月25日、奈良県内で2つの総合防災訓練が同日に開かれました。令和8年度 奈良県防災総合訓練・川西町防災訓練(主催:奈良県・川西町)と、令和8年度 奈良市総合防災訓練(主催:奈良市)です。弊社はいずれの会場にも防災啓発展示として出展しました。
訓練の会場では、避難所の開設手順が手順書どおりに動くか、外から来る人と物を受け入れる段取りが回るか、住民が実物に触れて判断材料を持ち帰れるかが確かめられています。担当者として当日どこを見ればよいかは防災訓練の会場で自治体は何を確かめているのかで整理しました。
制度の側と現場の側が同じ月に動いたのは、この連載では初めてです。
動いていないこと ─ 基準と、整備そのものへの財源
シェルターの技術的な仕様や定義・名称、優先して取り組むべき地域の整理は、基本方針で「1年後を目途」とされました。逆算すると2027年春頃です。10月中に、この整理が前倒しされたという発表は確認できていません。
整備への財政措置も同じです。令和9年度の要求に立ったのは調査・研究の費目であり、自治体の整備に配る補助金ではありません。令和8年度の地方財政措置に国民保護の枠がないことはシェルターに使える国のお金はあるのかで制度ごとに確かめたとおりで、その状況は変わっていません。
なお概算要求は要求であって、決まった予算ではありません。年末の政府案、年明けの国会での成立という順で確定します。10月の時点で「予算が付いた」と読むのは早すぎます。
自治体・組織はいつ動くべきか
弊社は、基準を待つ期間と動ける期間を分けて考えることを勧めています。
待つしかないのは、仕様と等級に関わる部分です。壁の厚さや換気の要件は2027年春の整理を見てからでないと確定せず、先回りして投資すると作り直しになります。
待たずに始められるのは、場所と用途と手順です。地下を持つ施設の棚卸し、その建物の改修計画の時期、平時に何に使う場所にするのか、そして指定した施設が実際に開くのかという点検。11月に組織が変わっても、この作業の中身は変わりません。組織の移行期はむしろ手が止まりやすい時期なので、止めなくてよい部分を先に見分けておくことが効きます。
制度の全体像と自治体が取れる選択肢は自治体担当者のための核シェルター入門に、既にある地下に手を入れる工程は既にある地下をシェルターにする段取りにまとめています。
次の月次レポートで追うこと
11月版では、発足した防災庁の組織令と事務分掌で国民保護の担当がどう整理されたか、令和9年度予算の政府案で調査・研究の費目がどう扱われたか、そして10月の訓練で見えた課題が各団体の計画にどう反映され始めたかを追います。
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制度の前提から知りたい方は核シェルターとは何か、公共施設への後付けを検討する方は核シェルターは公共施設に後付けできるのか、先月までの動きは2026年9月版をご覧ください。
出典
内閣官房・消防庁・内閣府「緊急一時避難施設の指定状況(令和8年4月1日時点)」 https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/02_R8bunseki_kekka.pdf
防災庁設置法(令和8年法律第61号・令和8年7月17日公布)案文および法律概要 https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/260306/shiryo2.pdf / https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bousaichou_preparation/pdf/gaiyo_260717.pdf
内閣官房「令和9年度予算概算要求の概要」(令和8年8月) https://www.cas.go.jp/jp/yosan/pdf/r9_yosan_gaisan.pdf
内閣官房「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」概要(2026年3月31日閣議決定) https://www.kokuminhogo.go.jp/pdf/hinan/260331shelter_gaiyou.pdf
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